先日読者様のKさんからイラスト(線画)の添削依頼を頂きました。
今日はこのイラストの改善点や修正方法などをご説明しつつ、今後Kさんが「絵の上達のためにやるべき事は何なのか?」についてお話ししたいと思います。
先に言ってしまうとKさんが今後やるべき事とはずばり「デッサン力の向上」だと思います。
とは言え、このデッサン力って一体どうゆう力のことをいうのか?よく分かりませんよね?
僕も何度も調べた事がありますが納得できる回答には出会えませんでした…
たぶん「ある特定の能力」を指すのではなくもっと「総合的な力」のことを言うのだと思います、色んな基本を習得した上で段々発揮できるようになる力…みたいな
だから初心者にも理解できるような端的な説明ができないのだと……
ですが、僕が思うに「その総合力の中でもコレが1番大事なんじゃないか」と思うものがあります、
それはずばり「モチーフを立体的に捉える力」です。
Kさんが取り組むべき「デッサン力の向上」とは↓
- モチーフを立体的に捉えられるようになること、
- 言い換えると「モチーフを頭の中で立体的にイメージ出来る様になる」ということ
それさえできればこのイラストの悪い所は自ずと修正出来るはずです
主にこの3箇所↓
(衣装の皺とか、その他の細かいところは適切な資料を見ながら描けば直せるので、デッサン力とはあまり関係ないと思うんですよね)
では詳しく見ていきましょう
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*良かった点
まずはKさんのイラストについて良かった点・悪かった点など簡単にご説明いたします。
絵を始めて1ヶ月半であることを考えるとかなり上手だと思います
人物の体も腕が短いという点を除けば、バランスよく描けていると思います。
特に足の組み方などは、難しいにも関わらずよく描けています。実際添削する際も殆ど手を入れませんでした。
ブーツも描くのが難しいモノだと思いますが、
向かって左側の横から見たブーツはほぼ完璧に描けています。
下の正面を向いたブーツは少し修正が必要でした。
後でまた言いますが、基本的にこの「手前に向かって伸びてくるモノ」は描くのが難しいです、まさにこの記事の本題である「デッサン力がないと描けないもの」だと
*悪い点(改善すべき点)
悪い点に関してはKさん本人には詳しくお伝えしていますが、結構な長文になってしまうのでここでは特に重要な点だけお伝えします
立体的に不自然な箇所がある
細かな改善点は数多ありますが、それらの解決方法は全て、
「適切な資料を見つけてきてそれを見ながら描くこと」
です。
もうこれが「最も確実で手っ取り早い方法だ」と言っていいでしょう。
…が、一つだけ資料を見ながら描いたとしても解決できない(上手く描けない)問題があります。
それが「立体的に不自然である」ということ、
前述した通り以下の3箇所ですね↓
おそらく皆さんも「なんか立体的に変だな」と…感じるんじゃないでしょうか?
こういった違和感があるとその他の部分をどれだけ丁寧に描いたとして「下手な絵」に見えてしまいます。
そして多くの方がこの事で悩んでいるのではないでしょうか?
資料を見つけても根本的な解決にならない…
この問題は資料を見ながら描くという方法では解決できません。
なぜなら、そういった考え方をしていては、描こうとしているアングルと全く同じ写真を見つけてこなければ上手く描けないからです。(または鏡の前で自分で同じ衣装を身に付けて同じポーズをとって描くか)
ですが、全く同じ写真は大抵の場合見つかりません。見つかったとしても多大な時間と手間がかかってしまいます。
それに毎度毎度資料を探して見ながら描くなんてのはもうお絵描きが単なる面倒な作業みたいになってくるので楽しくありません
…最悪描くのが嫌いになってしまいます
資料を写すんじゃなくて資料を元に考えて描く
なので資料を参考に自分の描きたいアングルを考えて(想像して)描けるようにならなくてはいけないんですね。(資料を見るのは大切ですがそれを写せばいいという訳ではないんです。)
そうすれば自分でアレコレ妄想してキャラに好きなポーズをとらせる事が出来るようになります、資料探しの手間も大きく削減出来ます。
→お絵描きが楽しくなります=根本解決
この「描こうとするアングルやポーズを考える力・イメージする力」がデッサン力、(ないしはデッサン力のベースにある)のだと僕は思っています。
ではこういった力を身に付けるにはどうすれば良いのでしょうか?
以下、それについて書きます。ポイントは2つです
1.アタリをとる(モチーフを単純化する)
2.パーツに分解して描きたいポーズに組み立てる
図示するとこうゆうイメージです↓
詳しく説明していきますね。
1.単純な形(アタリ)に置き換える
人間を描く時、まずは上図↑のような簡単な人形(人の形をした物体)を描いてから、それに表情や骨格の起伏を描き込み、最後に衣装を着せてあげるという手順で描くことをオススメします。
↑Kさんのイラストを人形化したもの
もっとラフに描いてもいいです↓
ここで絵の不自然な所を洗い出す
こんな人形描いてないで「早く顔やカッコいい衣装を描いてあげたい」とゆう気持ちはよく分かりますが、それを抑えてここで以下のことをチェックして下さい。
・自分で同じポーズをとってみて自然にとれるポーズであるかどうか(苦しかったりどこかに力を入れていないと取れないポーズだと絵も変になります)
・さらに立体感や奥行き感にも不自然さや間違いがないか?
などを入念にチェックしてください。
絵を段階的に描いていく(作っていく)
慣れないうちは面倒な手順に感じるかも知れないですが、いきなり清書するんじゃなくてこうゆう段階的な描き方をオススメします。
これは一般的にも推奨されている手順です。「まずは大まかに描いてから細かい部分を描いていこう」とかよく言われていますよね?
いきなり完成させようとするんじゃなくて設計図を見ながらちょっとづつ作っていくような感覚ですかね?、(この設計図というのがアタリに相当します)
服で体を描いてはいけない
間違っても服で人間の体を描こうとしてはいけないと思います。
なぜなら衣装で人間の体を形成しようとすると服の皺だとかその服の特殊な形状・ディテールなどの膨大でややこしい情報に邪魔されて、人体の立体感や奥行き感のチェックが出来なくなってしまうからです。
そればかりか手足の長さなどの基本的な部分まで変になってしまう可能性もあります。
そうなると下手な絵になってしまうのはもちろん、修正も不可能になってしまいます。(はじめから描き直さなければならなくなります)
(おそらくKさんは腕や胸周りを服で描いてしまったのではないかと感じています↓
その割に下半身は上手に描けているので確信はないのですが…)
なので、まずは単純な人形にポーズをとらせて(アタリをとって)そこで手足の比率の間違いや立体感の不自然さなど大きな問題がないかをよく精査し、それから目鼻口や髪の毛、胸(おっぱい)や筋肉・骨の凹凸などの詳細を描きこんでいきましょう、
そうして最後に衣装を着せてあげましょう。
オススメ人体教本「やさしい人物画」
ちなみに僕もこの描き方(手順)でないと上手く描けません。高校生の時にこの手順を「やさしい人物画」で学んで以来、未だにこの手順を踏んでいます、必ず裸体を描いてから衣装を着せています。
参考記事↓
・【体の描き方】キャラ絵が劇的に上手くなる!どんなポーズも自在に描けるようになる方法!
・画力アップの起爆剤?!漫画を描けば絵・イラストは爆発的に上手くなる!!「上達過程公開第2弾」
【余談】骨人形と同じもの
余談ですが、この人形はやさしい人物画に載っている骨人形と同じ役割のものです。
ですが「骨人形は難しい」という声を多く聞くのでこちらの人形の方がまだマシかと思いまして…
(確かに骨人形は肋骨や背骨のS字、骨盤周りが難しいですね。俯瞰や煽りになると途端に描けなくなるのは分かります)
でもこの人形も決して簡単ではないです…、上手く描くコツを後で紹介します
話を戻します↓
アタリには重要な役割がある
こうやってモチーフを単純化しデッサンの狂いを見つけやすい状態にしてみましょう
こうすることで少なくとも「腕が短い」とか「手前に伸ばしている腕の立体感が不自然」だとかいう初歩的な問題は起こりにくくなるはずです。
結果的に修正の手間が減るので、速く(効率的に)描けるようになります。
アタリは単なる「雑な下書き」ではなく絵を一旦ふるいにかけてデッサンの狂いを削ぎ落とすという重用な役割があります。
まずはこれが立体的な絵を描くための一つのポイントです。
そしてもう一つ…
このアタリですが単純な形の人形であることは確かなのですが、決して簡単に描けるという訳ではなくそれなりに難しいです。なので次は人形を描く時の注意点や考え方について書きます。
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*アタリ(人形)を描く時の考え方について
パーツに分けて考える
人形を描く時、
この人形のことを「所詮は単純な形をしたパーツの集合体である」と考えて欲しいのです、
…どうゆうことかと言うと、
人形を一旦関節ごとにバラバラにすると意味を分かってもらえると思います↓
バラバラにすると個々のパーツは単純な形をしています
・関節は球体(ただの丸)
・胴体だけ少し難しい形をしていますがウエストの部分で分離するとそれぞれ(胸部と腰)は起伏が殆どない単なる塊みたいになります、
(個々のパーツ単体で見れば、煽りや俯瞰などのアングルでもそこまで難しくはないのではないでしょうか?)
人体というのは所詮「これらのパーツを組み合わせて人の形を成しているだけのモノなんだ」と考えて欲しいのです、
手前に突き出した手足も描きやすくなる
そう考えれば、描くのが難しいとされる手前に伸ばした腕や足も「所詮は2本の円柱と球体を組み合わせたものなんだ」と思い直して、その立体感や奥行き感を表現しやすくなるんじゃないでしょうか?
(手のアタリはキッチンミットのようなものを描いておけばよいと思います。僕はいつもそうしています)
円柱の立体感・奥行き感の出し方は難易度的には立方体を描くのと大差ないと思います。(もちろん練習が必要ですが慣れれば難なく出来る様になります。)
立方体を使って立体把握力を鍛える練習方法→立体的な絵が描けない、を解決する!空間把握・認識能力をガンガン鍛える練習方法とは?!パースについても解説)
さらにそれを別のポーズに組み直す
そしてさらにそれらを(各パーツ群)を別のアングルやポーズで再度組み直すこともそう難しくはないんじゃないか……
という気がしてきませんか?
バラバラにして再編成↓
バラバラにして再編成↓
バラバラにして再編成、↓
頭の中でプラモデルを作る
例えるなら頭の中でプラモデルを組み立てるような感覚で考える訳です。
難しい場合はデッサンフィギュアを活用する
頭の中で想像・イメージすることがどうしても難しい場合は、下記の様なお絵描き用のフィギュアを活用すると良いです↓
このフィギュアと自分の想像とを照らし合わせて、「何が自分の想像と違っていたのか?何を勘違いしていたのか?」をいつもチェックして下さい。
「あ〜、上手く描けないな〜」と分からないままにするのではなくその都度正しい形・正しい見え方を知ってください。そうしていれば段々と人間の体の形が知識として頭に入ってきます。
これを習慣にできれば画力はみるみる伸びてきます。
続き↓
これがデッサン力(空間把握力)
絵を描く際に必要となる「立体認識力」や「空間把握力」というのはこうゆう感覚を指すのだと僕は思っています。
頭の中でプラモデルを作る感覚
推測ですが半年〜1年くらいこれを意識して人物やらキャラクター、その他なんでもetc.を描いていれば段々と空間把握力は鍛えられてくると思います、
生まれつきの才能や特別なセンスなど必要ないと思います、日々の習慣として意識していけば必ず立体把握は出来る様になります。
僕も昔は出来なかったですから。その証拠↓
昔の絵
→絵は独学でもこんなに上手くなる!ド下手だった僕の10年間の上達過程公開!秘訣は3種類の模写?!
はじめにも言いましたがこの空間把握力というのはデッサン力と同義だとも思っています。
この力が「同じモチーフを別のアングルで描く」とか、「キャラクターに別のポーズをとらせる」といった一般的に難しいとされている事を可能にしてくれます。
2番目に大切なデッサン力(陰影の描き方)→デッサン力倍増まちがいなし!物体を面で捉えて立体感ある絵を描く方法!
デッサン力が絵の上達の鍵(上手くならない原因は?)
絵は平面(2D)ですが、頭の中ではこういった「立体的なイメージ(3D)を持っていないと上手く描けません、
どんなに勉強しても(知識を増やしても)どれだけ資料を集めてきてもこの感覚がないことには結局「立体感や奥引き感が不自然なデッサンの狂った絵」になってしまいます、
世の中、絵の上達のために長年努力と勉強を積んでいる方は沢山います。ですがそれでも上達できない方が多くいるのも事実。
おそらく原因はこの「モチーフを立体的に把握する」という感覚が掴めないのだと思います。
なぜなら、長年絵が上達しないと悩んでいる方の絵の特徴として細かな描き込みは丁寧にやっているのに、どうしても「立体的に不自然」という問題をクリア出来ていないからです。
できる側からすると「ちょっとしたコツというか、発想の転換のようなもの…」だと思うのですが、頭の中の考え方を他人に正確に伝える(教える)のはなかなか難しいんですね……
この感覚さえ掴めれば、必ず上手な絵が描けるようになるはずなんですが……
この記事がそれを掴むきっかけヒントになれば幸いです。
以上、これが2つ目のポイントです。
アタリをパーツに分解すれば立体感の是非が判断しやすくなり、そしてそれを別アングル・ポーズに組み直すことも出来るようになる
→つまり、キャラを好きなように動かせるようになる
【まとめ】オリジナルの絵を上手に描くための基本ステップ
上でお話しした2ポイントをまとめるとオリジナルの絵を描くための手順は次の2ステップになります↓
2.そしてそれをパーツごとに一旦バラバラにして自分が描きたいアングル・ポーズに組み直す、
Kさんは今後以下2点を意識して練習していけばググッとレベルアップできると思います。
1.アタリの段階でのデッサン(=間違いや不自然さを正すこと)をもう少し入念に行う
2.モチーフをパーツに分解して立体的に組み立てるという考え方・感覚を導入してデッサン力をさらに鍛える・向上させる
頑張ってくださいね。
という訳で今日は以上です。
ではまた^_^
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